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ICSSI 2024 参加報告

ICSSI (International Conference on the Science of Science & Innovation) は、Science of Scienceの代表的なカンファレンスです。今年はワシントンD.C.米国科学アカデミにて7月1日から3日にかけて開催されました。参加者は200名程度が集まり、異なる分野の専門家が一堂に会しました。次回の開催地はコペンハーゲンとなる予定です。

当研究室からは以下の二つの研究が採択され、研究発表を行いました。

"Understanding Venture Capital Investment Trends through Social and Academic Recognition", Noriyuki Higashide*, Hiroyuki Miyamoto*, Cristian Mejia, Ichiro Sakata and Yuya Kajikawa (* Equally Contributed)
"Scientists Have an Inherent Prioritized Queue in Selecting Collaborations", Chiaki Miura, Kimitaka Asatani, Ichiro Sakata

本会議のパネルディスカッションでは、科学の社会的インパクトをどのように評価するかが議論されました。特許や論文にとらわれない新しい評価指標の導入が求められており、大規模データやScience of Scienceで培われた技術がその一助となる可能性があります。また、論文の不正や撤回に関する問題も取り上げられ、AIの導入だけでなく、学問の仕組み自体の見直しが重要であるとされました。

さらに、科学技術政策におけるエビデンスの利用についても熱い議論が交わされました。米国の科学技術政策担当者Kei Koizumiは、エビデンスが政策決定の補助として重要だが、それだけでは政治を変えることができないと指摘しました。ランダムなFundingの導入や社会実験の必要性も挙げられ、エビデンスの価値をどのように政治に反映させるかが課題として浮き彫りになりました。

印象に残った研究としては、例えば、企業が大学近くに研究センターを設置したことによる学術成果の質の向上についての因果が認められたことがあります。また、議論を呼び起こしている"Disruptiveness"という概念が、より正確には"Displacement"であるという議論も行われました。

学会全体の雰囲気は、好奇心旺盛でオープンマインドな参加者が多く、異分野融合型の学会ならではの自由な議論が展開されました。一方で、重要な研究課題をより明確にし、分野を超えた参加者間での合意形成が今後重要になってくると感じました。この学会は、多様なステークホルダーを巻き込み、科学技術政策や学術研究の議論をリードしていく役割を担っており、社会的インパクトを追求するコミュニティとして、今後ますますの発展が期待されています。

日本でも、我々の研究室を中心として、異分野の研究者をつなげ、社会的意義に目を向けた研究会活動を開始しています。国内およびアジア圏でのScience of Scienceを牽引するトップ研究者を育てるべく、Science of Science研究会を開催しています。分野、大学を超えて新たに3名の研究者がSteering committee が参加するなど、規模を拡大しています。

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