坂田・森・浅谷研究室
ICSSI 2023 参加報告
ICSSI (International Conference on the Science of Science & Innovation) は2023年でまだ第二回と比較的新しいカンファレンスですが、Science of Scienceの分野では最も大きいカンファレンスの一つです。ICSSI2023はこの分野の一つの中心となっている米国イリノイ州エバンストンにあるNorthwestern Universityにて6月26日から28日にかけて開催されました。
当研究室からは以下の二つの研究がPoster Sessionに採択され、研究発表を行いました。
- “Hot Streaks Occur in Early and Late Career Stages Beyond Random” (Noriyuki Higashide*, Takahiro Miura* (* Equally Contributed), Kimitaka Asatani and Ichiro Sakata)
- “Analysis of Comprehensive Twitter Follow Networks and Academic Performance” (Daiki Miura, Kimitaka Asatani, Takahiro Miura and Ichiro Sakata)
東出博士課程と三浦(崇)博士課程は研究者のキャリアにおいてインパクトの高い論文が一定期間に集中する現象、Hot streakについての発表を行いました。キャリアの初期と後期に良い仕事が生まれやすい、という私たちの分析結果は、多くの研究者から注目を集め、活発な議論が交わされました。Network Scienceの大家であり、晩餐会の講演に招かれていたAlbert-László Barabásiからも示唆深い意見をいただけたことは、特に印象深い出来事でした。研究者として最も優れた論文を発表するタイミングは、長いキャリアにおいていつなのか?という問いは、会場にいる誰もが自分ごととして捉えられることであったと思われます。
一方、三浦(大)修士課程の発表も昨今のTwitterに関する注目とも相俟って世界各国の多くの研究者の興味を引き、活発な議論を行うことができました。特にこの研究で着目した情報収集源としてのTwitterという点に関しては他の研究者からの反応もよく、彼らの実際のTwitterの使い方も含めた具体的な議論を行うことができました。また、この研究のこの先の発展に関しても意見交換を行い、非常に有意義な場となりました。
研究発表をする学生ら(左から、東出博士課程、三浦(崇)博士課程)
研究発表をする学生(三浦(大)修士課程)
Keynote SessionやPanels Sessionにおいては中国研究者についての研究からGenderに関する研究、そしてTeam managementに関する研究など、社会学、経済学、経営学にまでわたる幅広い観点からScience of Scienceという学問を捉える良い機会となりました。
Northwestern UniversityのDashun Wang教授らは、2018年にNatureでHot streakに関する論文を発表しました。東出博士課程と三浦(崇)博士課程が今回の研究成果について議論をしたいと申込んだところ、快く時間をとってくださり、会場と同じ建物にある会議室で議論を行いました。彼の鋭い着眼と意見は、研究の発展に対し本質的な広がりを与えるものとなり、大変充実した場となりました。
Wang教授は本カンファレンスの主宰者の1人であり、書籍「Science of Science」を出版するなど、分野の開拓者とも言える存在です。現在、私たちの研究室ではこの翻訳に取り組んでおり、日本での分野発展に向け有益な意見を交わしました。中でも、Wang教授は我が国の科学のユニークさ、分析対象としての面白さを指摘され、新たな視点を得ることができました。
Wang教授との議論(左から、Wang教授、三浦(崇)博士課程、浅谷特任助教)
(文責:東出紀之、三浦大樹)